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広島家庭裁判所福山支部 昭和52年(少)503号 決定

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

罪となるべき事実

少年は、

1  Aと共謀のうえ、昭和五二年七月二二日午後一一時ころ、府中市○○町×××番地喫茶店「○○○」前路上において、通りがかりのF(当時二二年)に対し、「お前はさつき『何んならあこいつらあ』と言うたろうが」と因縁をつけ、同人からおとし前名下に金員を喝取することを企て、「ちよつと○○○○まで送つてくれ」と申し向けて同人の普通乗用自動車に乗り込み、そのまま「わしの言うところへ行けえ」と市内を連れ回した上、翌二三日午前一時ころ同市○○町×××番地○○○○工業団地に連行し、同所において「お前はわしらに喧嘩を売つたんじやろうが、喧嘩をしよう」といきなり所携のエヤーホーンで同人の頭、背中を殴打し、さらに膝をついた同人の左首を一回足蹴りにするなどの暴行を加えたうえ、「お前を刺し殺して埋めたろうか。火をつけて車ごと焼き殺したろうか。指を詰め。お前はこのおとし前をどうつける気か。」などと脅迫し、畏怖した同人に「今なら一万円で給料日払いなら二万円じや、どちらがええか」と金員の要求をなし、同人に八月五日の給料日に現金二万円を持参させることを約束させたが、同人が警察に届け出たため金員喝取の目的を遂げず、

2  同年八月一日午後一一時四〇分ころ、福山市○○町○○○○○駅○陸橋下県道上において、興奮幻覚又は麻酔の作用を有する毒物又は劇物であるシンナーをみだりに吸入する目的で所持し、

3  遊興費に窮したことから金品を喝取しようと企て、B、E、Cと共謀のうえ、同年一〇月一三日午後六時ころ、府中市○○町スーパー「○○○」○○店前路上において、通行中のG(当時一七年)に対しCが「G車に乗れ」と命じて車両に引き入れ、同所から府中市○○町××番地の×○○木工株式会社付近まで連行し、同車両内においてこもごも「おいG、お前ええ腕時計をはめとるのお貸せえやあ、おどりや貸してやれえや、どうして貸されんのなら」などと怒号するなどし、不良グループの威力を背景に上記要求を執拗にくり返して金品を要求し、もしこれに応じないときは暴行等いかなる危害を加えるかも知れないような気勢を示して脅迫し、同人を畏怖させよつて同日午後六時三〇分ころ同所において腕時計一個(時価一万二〇〇〇円相当)の交付を受けてこれを喝取し、

4  同年一一月一二日午前一〇時四〇分ころ、同市○○町○○家具株式会社○○寮前付近路上において、興奮幻覚又は麻酔の作用を有する毒物又は劇物であるシンナーをみだりに吸入し、

5  同年一二月二〇日午後七時一五分ころ同市○○町○○センター東側空地において前記同様のシンナーをみだりに吸入し、

6  昭和五三年一月一〇日午後五時四〇分ころ、同市○○町○○○○○パチンコ店西側階段下の物置内において前記同様のシンナーをみだりに吸入し

たものである。

(適用罰条)

1  について 刑法六〇条、二五〇条、二四九条一項

2  4、5、6、について 毒物及び劇物取締法二四条の四、三条の三、同法施行令三二条の二

3  について 刑法六〇条、二四九条一項

(保護処分の理由)

少年は昭和五〇年三月四日窃盗罪により保護観察に付されたが、以後不良交遊は改まらず、昭和五二年六月三〇日には姫路の勤務先に安定することを期待されて再度の保護観察に付されたが、その直後府中市の親元に帰り、勤務状況も不良のまま、不良交遊を続け、本件非行を犯すに至つたものである(なお少年は一、二、の事件について昭和五二年八月二五日試験観察に付されていたもので試験観察中に三、ないし六、の非行を犯したものである)。少年の非行は共犯者に追従しての非行や非社会的なシンナー吸引等がほとんどであり、非行性そのものは高いといえないが、長期にわたる保護態勢にも乗らず、保護者の教育指導にも限界があり、在宅による矯正教育は困難であると思料せざるを得ない。今後は基本的な生活訓練から始めて一人でも現実の生活に耐えていけるだけの成長と独立心を植えつけるような教育が必要であると考えられ、そのための施設としては中等少年院が相当である。よつて少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条三項により主文のとおり決定する。

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